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2009/11/03first
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2024

※朴念仁なのは両方だから困るという話




 〝傾国の美女〟と例えを口にしたが、件の女は別に突出した美人というわけではない。いや、けして造作が悪いわけではないのだが。道行く男が振り返ったり、目が覚めるようななどと形容されたりはしない。
 名前はルナと言う。カノンより4つ年上と事前に聞いていたが、日本人特有の童顔さでカノンと変わらなく見える。もしかすれば欧州では年下に見られるかもしれない。ひとつ、言えることといえば、どこの店でも彼女に酒類は売らないだろう、ということだけ。
 不運と偶然が重なった結果、ルナはファミリーの賓客として〝丘の家〟に匿われていた。カシスが判断するに、向こう何年かは故郷に帰せないとのこと。別に彼女自身に瑕疵があるわけではなく、連絡網のなっていない馬鹿な組織が、富豪の娘と彼女とを勘違いして攫ったらしい。救出したのは俺たちだが、一歩、遅ければ〝手〟をつけられていた。
 現場を見てしまったカノンは、堅気の女の子になんてことを、と憤懣やるかたない様子で、まるで彼女のボディガードのように振舞っている。一方は婚約者がいるとはいえ、若い男が二人も住んでいる家にそんな一般人を匿うのはどうなのか、とは思う。が、他に適した場所もない。
 実際、バランスは悪くないようだった。メンタル面はスオミが、物理方面はカノンが守っている。馬鹿なファミリーの方は巻き込んだ一般人から噂が広がるのを恐れて、今も彼女の口を塞ごうと躍起になっているのだ。
「ルナはちょっとだけ、アル兄やスオミに似てるのよね」
 マーケットでカートを押しながらぽつりと呟いたカノンの言葉に首を傾げた。彼女は大ぶりのナスとトマトを見比べている。若干、舌触りや甘み酸味は違うが、どちらも日本でもよく食べられる野菜だ。
「似ているとはどのあたりの話だ?」
 アルとスオミが似ている、ならまだわからなくもない。日に焼けない肌だとか、言葉を必要としないやり取りをしているところだとか。似ていると言えなくもない。
 だが、ルナはそういったようには見えない。見た目も二人とは違う。アルもスオミも色素の薄い欧州人だが、ルナはすぐに日系とわかる。日本人と断言するには黒髪から遠い栗毛をしているが、それくらいだ。見た目でないなら所作や雰囲気だろうか。一緒に暮らしていない俺では判然としない。
 カノンはうーん、と唸りながら結局、ナスとトマトを一緒くたにカートの籠へ放り込んだ。
「んー、うぅーん、なんか、こう……はっきりと言葉にするの難しいな……。なんていうか、地面に半分しか足ついてない感じ、っていうか。ちょいちょい別世界で生きてる感じがあるのよね」
「俺からすればお前も十分、別世界の生き物なんだが」
「あ、ひっどい。あたしは重力かけて地面に引っ張ってる方だもん」
 いつだったか、カノンが小さい頃、アルバートと手を繋ぐとよく全体重をかけて空から引きずり降ろされたという話を思い出した。子どもの戯れかと思っていたが、狙ってやっていた所業だったか。たぶん、どうせ黒幕としてあの次兄が関わっているんだろう。
 乾物と缶詰が並ぶコーナーで足を止めたカノンが、うわ、と小さく悲鳴を上げる。
「カツオブシってこんなに高いの?」
「欧州では輸入制限が厳しいからな。なんだったか、製造過程で出る焦げだのカビだのが身体に悪いと言われているらしい」
「……これ、毒なの?」
「いや、別に。まあ、欧州人の体質向きじゃないってことなんだろう。例を挙げれば日本人は海藻をよく食べるから消化器官がヨウ素の分解に向いているが、欧州人はそうでもない。何にでも言えることだが、要は食べ過ぎが問題なんだ。現にカマンベールだって白カビだぞ、あれは」
「あ、そっか。でも、これ本当に魚なの? なんていうか、うーん、んー……」
 飲み込んだ言葉はわかる。馴染みのない人間にはただの木屑にしか見えないんだろう。冷静に考えてみれば、ただの魚にここまで手をかけるなんてアジア人の美食への探求はしばしば度を越している。
「一度、食ってみればわかる。他の欧州人に比べたら、俺たちだってタコなんてゲテモノを食っているらしいからな」
「美味しいんだけどな、タコ。んー、仕方ない。高い勉強料だと思うことにする。使い方、教えてね」
 思い切った顔をしてカノンはカツオブシの大袋をカートへ投げ入れた。練習分を考えれば大量に買ってしまった方が安上がりだ。
 数日後、初めてカツオブシで出汁を取った卵粥モドキのリゾットをルナに出してみたところ、大層、喜ばれたそうだ。ハイテンションなメールがカノンから届いていた。しばらく俺は日本食の講師もさせられるらしい。やれ、家庭教師(カヴァネス)というのも楽ではない。


「ふぅん? 件のお嬢ちゃんがアルやスオミに似ている、ねぇ……?」
 どうにも気になったカノンのファジーな発言を次兄のカシスに伝えたところ、がさがさとルナの個人情報がたんまり記載されたファイルを漁りだした。そんなものをどこでとは聞くまい。コイツにとっては朝飯前どころかブランチの合間に済ませる片手間作業だろう。
 リクライニングチェアをぎいぎい揺らしながら、使い捨てのボールペンをぎしぎしと噛んでいる。この男の琴線は未だもってよくわからないが、このところは頓に機嫌が悪い。
 アルバート曰く、アイツは必要悪の犯罪は躊躇わないけどレイプだけは許さないからなぁ、とのことだった。そう言うアルバートものんびりした口調は崩さなかったが目が笑っていなかった。
 カノンがまだ赤ん坊の頃、この男は娼館の妊娠させられた娼婦たちから母乳をもらっていたそうだ。自分の顔の綺麗さが際立ってきた頃には、食い扶持のために春を売っていたらしい。おそらく、その辺りに起因した主義なんだろうが、深くは踏み込んでいない。デリケートな地雷原でタップダンスを踊る趣味はない。
「アイツがそう言うならそうなんだろ。俺にはまだ地球人よりに視えたが。しかし、欧州と日本とでねぇ。まあ、そういうこともあるか」
「まるでアルバートたちが宇宙人みたいな言い分だな?」
「あ? ……ああ、お前には言ってなかったか。そうだ。うちの長兄は地球外生命体なんだよ」
 煙草の吸い殻をまた一本増やしながら、またぶっ飛んだことを口にする。
「空を飛べるってのは、つまり地球の重力圏内で生きていないってことだ。アイツのかつての生家周辺は粗方調べたが何代か前にアイツと顔がよく似たご婦人が嫁いでる。まあ、そのご婦人は空も飛ばないし、物を吹っ飛ばしもしなかったらしいがね。隔世遺伝的に発露しちまったんだろうねぇ」
「アルバートは知っているのか?」
「さあ? 直で言ったことはねぇけどな。だが、アイツは親だの兄弟だのから疎外感を感じて家出したクチだから、なんとなくは理解してんじゃねぇか? アレで孤独になると割と思い詰めるタイプだからな。スオミを探し出すのに苦労したもんだ」
「カノンには?」
「それっぽいことはむかーし言った。あくまで御伽噺の範疇でな。アイツがアルのことをよき隣人と認識しないといろいろ面倒なんでね」
 コイツの思考に追いつくのは少々、骨が折れる。カノンがきちんとアルバートを認めていないと面倒。それはつまり。
「世界に寵愛されてる、つったろ。世界ってのは突き詰めれば俺たちが住んでるこの地球のことだ。水の精霊ならナーイアス、木ならドリュアス、森ならアルセイスだが。さて、地球規模だと何と呼称するべきなんだろうな?」
 冗談めかして揶揄う口調で言っているが、至極、真面目な話なんだろう。肯定する材料が多すぎる。ようするに地球の寵児、星の精霊たるカノンが、〝よき隣人〟として地球外の宇宙人であるアルバートを認めなければどうなっていたのか。想像がつかないし、したくもない。
「さて、最初の疑問に戻るが、俺の視覚ではあのお嬢ちゃんは地球人に近い。まー、変なもんはたまに視えてる節があるが、それほど深刻って程でもねぇ。話すのに言語の擦り合わせが必要だし、空も飛ばない。だが、カノンがそう言うってことはどっかで同じような血が混じってんだろうな」
「純血種と混血種という話か?」
「アルやスオミだって純血種じゃねぇし、そこまで単純な話じゃねぇだろうが、例えとしては合ってる」
 地球外生命体の兄と地球の精霊種の妹か。途方もない話だ。だったら、間で調停しているコイツは何者なんだという疑問が湧いてくる。突発的な好奇心に従って良いことは何もないので、あえて何も訊かないことにするが。
 山盛りの吸い殻の中へ新たに曲げたフィルターを突っ込んだカシスが、デスクの上に片足をぶん投げて宣った。
「あん中じゃあ、俺がもっとも普通で真面に人間やってんだがなぁ」
「安心しろ。それはない」
 そんな団栗の背比べをするんじゃない。


 俺は〝丘の家〟には住んでいない。進んで来訪することもない。なので、日本から来た不運な少女と顔を会わせる機会は少なかった。彼女に対する情報の大半がカノンからの伝聞だった。特段、会わなければいけない理由はなかったし、遭遇した忌まわしい出来事を考えたなら、独り身の男が徒に近づくべきではないと知れたからだ。
 それでも保護しているという状況下で、まったくの無関係でいることは出来なかった。
 たまには外の空気を吸わないと気が滅入ってしまう、というスオミの診断にいの一番に案内役に手を挙げたのがカノンだった。まあ、わからんでもない。スクールにも通っていないカノンにとっては、初めて出来た歳の近い女友達だ。近いと言ったって4つは離れているが、それでもカノンの周囲を見回すと一番近い。
 それはそれで結構なんだが、そうなると当然のように護衛役が俺に回ってくる。サルバドルのファミリーはすべて先代のボスか、カシスが厳選した精鋭で構成されているが、それ故に常に人手不足だ。絡んでくるのが酔っ払いやらナンパ男だけなら、カノンがどことは言わない場所を蹴り上げて終わる。が、生憎、これに関しては本職が出しゃばってくるのを想定しなくてはならない。
 待ち合わせて久方ぶりに顔を合わせても、俺とルナの間に会話らしい会話は生まれなかった。彼女は会釈しようとするクセを留めて、結構、綺麗なイタリア語で「改めてよろしく」と口にした。少し距離があるのは致し方がないことだし、無理に詰めようとは思わなかった。
「イタリアを歩くのは初めてじゃないけど、なんていうか、どこの家でも花を育ててるわよね」
「日本人は家で花を育てないの?」
「そういうわけじゃないけど、都会のアパルトメントとかに住んでいると育てない人もいるわ」
「ふぅん。デイジーやハーブなんてどこでも育つのに。虫除けはどうしてるの?」
 街並みや賑わうバザールを眺めながら女二人が親しげに会話を交わす。俺は目を光らせながら数歩後ろを音なく歩く。住む文化圏が違う二人の会話はたまにちぐはぐで、しかし、二人ともそのちぐはぐ加減を楽しんでいるようだった。
 カノンは自分の住む町を案内できるのが楽しいらしい。ルナは日本にしかない文化を教えるとカノンが斜め上の反応をするのが面白いようだ。甘党で食いしん坊という共通点があるらしく、逐一、食べ物の屋台の前で足を止めるのがわかりやすい。店頭で果汁を搾るスプレムータに揃って舌鼓を打っていた。
「カノンはこういうものには興味はないの?」
「へあ?」
 古着のストールを店頭に並べている店の前で立ち止まったルナが不思議そうに尋ねた。彼女の視線の先を追ったカノンは思い切り首を傾げた。
 ちなみにカノンは変わらず無地のパーカーにメンズと大差ないジャケットを羽織っている。ルナも似たようなものだが、まあ、彼女の場合は少し事情が特殊だ。今はスカートを穿きたくないだろうし、いずれ帰る場所があるのだから自分の服を増やしても仕方がないという意識がある。
「あなた、せっかくいろんな色が似合うのに。そうね。シンプルなホワイトとブラックなら大人っぽくなるだろうし、青は瞳の色だし、濃い目のオレンジやピンクもいいかも」
「うーん、むぅ……?」
 今ひとつピンときていない顔で唸っている。年頃の少女のようにはにかんだり、遠慮がちに首を振って否定したりはしない。カノンにとって衣服という代物は寒さから身を守るためのツールに過ぎないからだ。
 ロングヘアを保っている理由も、アルバートの懇願より、幼い時分のカシスがもしものときに高く売れるから切るな、と命じた呪いの方が強いように思う。実際、彼女の見事な天鵞絨のような金髪は高値がつくだろうから、なかなか呪いは解けないでいる。
「アル兄とスオミの婚約パーティーをしたときに、雑誌のファッションを真似たことがあるんだけど」
「だけど?」
「すっごくすーすーして軽すぎて落ち着かなかった」
 まあ、そうだろうな。普段、民間の軍事会社払い下げのような服を着ているのだ。一般人が祝い事で着るようなぺらぺらなドレスやストールを与えられて落ち着くかと言われたら、否に決まっている。
 小さく溜め息を吐いたルナが緩く首を振り、カノンの頭を撫でた。そして妙に深そうな意味を孕んだ目で俺を見る。お前もか。何だってあの家に住んでいる人間はそんな変な期待と非難を込めた目で俺を見るんだか。
「……まあ、いいわ。お洒落なんて無理にするものでもないしね」
 そう言ってルナはストールから手を離した。


 なるたけルナと二人きりにはならないよう気を配っていたが、やむを得ない場合というものはある。
 カノンの携帯が鳴り、その着信の相手がカシスだった場合だ。作戦中を除いて無精者のヤツが個々に連絡を寄越すというのは、大概がその個人に重要な用件があることを意味する。他の人間にはなるべく聞かれないようにしなければならない。
 某有名映画で聞く重々しいテーマ曲が鳴って、カノンが露骨に眉をひそめたので、その電話だと気づいた。いや、何故、兄からの着信音を、星間戦争を描いた映画のBGMにしているかはわからんが。逆は確かフロシュ・ゲサングだった気がする。ちなみにカノンのほぼ唯一苦手な生き物がカエルである。互いにおちょくり合わないと死ぬのか、お前たち兄妹は。
 ルナのことを気にしてはいたが、無視するわけにはいかない。ちょっと行ってくる、と席を立ったカノンをルナも笑顔で送り出した。が、視線が合った途端に顔と身体が強張ったのがわかる。仕方がない。どれだけその気がなかろうと、俺は男だ。女に見えるような顔立ちも体格もしていない。
 後ろ手に腕を組み、背中を石壁に押し付けて視線を外す。手錠も檻もないので気休めにしか過ぎないが、何も意思表明をしないよりはマシだ。
 ぱちり、と翠がかった目が瞬かれた。
「ありがとう。あなたは紳士なのね」
 意図は伝わってくれたらしく、そんなことを言われた。少しだけ考えて口を開いた。
『こちらでは水質が違うからモドキしか作れないが、日本食はどうだった?』
 瞬いた目が見開かれた。
『あなた、日本語が話せるの?』
『しばらく使っていなかったから発音は怪しいと思うが。一通りは』
 強張っていた肩からほんのわずかだけ力が抜ける。
『全然。クセも訛りもなくて驚いたわ。誰かに教わったの?』
『教わったというより、数年ばかり住んでいた』
『……ああ、なるほど。納得したわ』
『納得?』
 初めて俺と話すルナの表情に笑顔らしきものが浮かんだ。
『カノンがいきなり卵粥なんて出してきたから驚いていたの。家のキッチンで練習していた様子もなかったし。どこで覚えてきたのかしら、って疑問だったのよ。あなたの仕業だったのね』
『仕業と言われるほど悪だくみをした覚えはないが』
『まったく。見た目通り、真面目というか堅物な男ね。言葉の綾に決まってるじゃない。ありがとう、美味しかったわ。こっちで鰹出汁のお粥なんて食べられると思わなかった』
『言い出しっぺはカノンの方だ。礼ならアイツに言ってくれ』
 物怖じしない性格だとは聞いていたが、想像よりも肝が据わっている。普通なら、どれだけよくされていても一般人が裏社会の人間に向ける目はもっと厳しい。気にしないのが一番、と常に心得なければならない程度には。
『でも、よかった。しばらく日本語で話す機会なんてなかったから、このまま忘れたらどうしようかと思っていたのよ』
『〝機会がなかった〟?』
『? ええ。何か気になる?』
『いや……何でもない』
 アルバートはどうだったかわからないが、少なくともカシスはかなりネイティブに話せるはずだ。あの兄弟が何種の言語を話せるのか、俺でもわからない。時折、文化圏も判然としない言語が飛び出すこともある。
 だから、日本語でのコミュニケーションは可能なはずだが、そうはしていないということになる。
 ――まあ、アイツのすることにいちいち意味を問うのも面倒だな。
 馴れとは怖いもので、あの悪魔のやること為すことに逐一、反応するのも馬鹿らしくなっていた。ましてや、共に暮らしている住人でもない俺が口出しするようなことにも思えない。
『今日、来てみてわかったことがあるわ』
『何がだ?』
『ときどき、カノンが家にいなくても誰も焦らない理由よ。カシスもアルもスオミも全然、心配しないものだから、ちょっと不思議だったの。どうせあなたのところにいるだろうから、って』
『……それはそれで問題だと思っているんだがな』
『そうでしょ? あの年頃の女の子が一人暮らしの男のアパルトメントに出入りするなんて、普通は心配で仕方ないと思うのだけど。何故か、スオミまでやめろとは言わないものだから。でも、今日でなんでなのかわかったわ』
『はあ?』
『だって、あなた……』
 何かを言いかけたルナが口を閉じた。軽く目を見開き、わずかに青ざめている。あからさまにしまった、と顔に書いてある彼女の視線を追うと、今し方、戻ったばかりのカノンが碧眼を瞬かせて立っていた。どうしてか、やや戸惑ったような、見てはいけないものを見てしまったような、妙な表情をしていた。
「えっと……ただいま?」
「おかえり。大丈夫だったか?」
「うん。ちょっと確認したいことがあっただけだって」
 すぐにどこへ向かわなければ、と言い出さないあたりは本当にそれだけだったのだろう。予定が潰されることもない。だというのに、何故だか、その声に覇気がなかった。
「カノン?」
「え? えっと、なに?」
「何かあったか?」
「ん……んんー……?」
 ぐるぐると考え込むような仕草の後に、ふるふると首を振る。なんでもない、と小さく呟いてから、ぱっと顔を上げた。
「お腹空いた! どっかのバルで何か食べよ!」
 そう結論づけたらしい。同年代のコミュニティで学ぶべき情緒や感性が少々未発達なカノンは、自分で処理できない何かを抱えるとそのように片づけてしまう癖がある。後で話を聞いてやる必要があるかもしれない。留め置いた直後、近くにいたルナが額に手を当てながら呆れたように日本語で口にした。
『私って、厄年だったかしら?』
 カシスの集めた個人情報が正しいのなら、あと一年あったはずだが。


 彼女の要望通り、お気に入りのバルに入ったが、明らかに食べる量が少なかった。
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