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2009/11/03first
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自分が出来ることの小ささに時々絶望する。
※都内で相次ぐ連続自殺事件を多方面から語るモノ語り



「楽しそうだけど、何かいいことでもあった?」
「うん? そ、そう? べ、べつにフツー、よ?」
「ふぅん?」
 ――私ってそんなにわかりやすい?
 自問自答をしながらぺたぺたと顔を触ってみる。「明日もよろしく」言葉を信じて今日は寄り道をせずにウィークリーマンションを訪ねてみた。出迎えてくれた少年は当然のように大きめのバスタオルを出してくれた。本当は緊張していて、タオルをもらった途端にとても安心してしまったのは秘密である。
 そんな里菜は今日も夕食を手伝い(今日は麻婆豆腐と青梗菜と春雨の中華スープ、胡瓜とクラゲのサラダだった)、昨日と同じ英語の本を前に辞書とにらめっこしている。
 対する少年は数学の教科書を開いているものの、今日は集中力に欠いているのか、先ほどからテレビのリモコンを弄っている。
「ねえ、アンタこそ何かあったの?」
「そういう風に見える?」
「うん」
 別に里菜への扱いが粗雑になった、というわけではない。彼は最初に会ったときと同じ温度で接してくれている。
 なんというか、そう、セイサイに欠いているというか。とにかく、なんとなく元気がない。いつもの憎たらしいくらい正論な饒舌も今日は聞いていない気がする。
 少年はテレビのニュースから里菜に向き直って、深く溜め息を吐いた。
「鈍いと思ってたけど、割と鋭いんだね。君」
「なっ、ちょっと! 失礼じゃない!?」
 思わず声を荒げてしまったら、俯いたままでくくっと忍び笑いをする。なんだ元気じゃない、と一瞬だけ思ったけれど違う。誤魔化されたんだと気づく。
「世間がこういった風潮だとね。そういう日もあるさ」
 頬杖をついて少年はテレビに視線を戻した。ニュースではずっと都内連続自殺事件を追う、の文字がピカピカ踊っている。この少年もこんな俗世に気を遣ることがあるのか。
 何だか勝手に少年を仙人か、ううん、それはちょっとおじいさん過ぎる。ともかく人間社会には興味がないような、妖精か何かのように考えていた。
 テレビの中のアナウンサーが、自殺を考えてしまう前に、なんて訴えている。それが何だか空々しく聞こえてしまうのは、きっと私の問題だ。
「……本当に自殺を考えたことがない人って、いるのかな?」
「何、哲学?」
「そんなんじゃないよ。哲学なんて難しいことわかんないもん。でも、この子たちの気持ちが1ミリも理解できないとは思えないんだ、私」
 アナウンサーがこれまでの自殺者が抱えていた事情を裸にしている。難しいことはよくわからない。でも、これは大人のよく言う死者へのボウトクには当たらないんだろうか。わからない。
「みんな、明日が怖いんだ。明日の自分がどうなってるか、想像できなくて怖い。子供の頃は明日何して遊ぼうかわくわくしてた。でも、いろんなことを知っていくにつれて、私は明日が怖くなった」
「それは高いところから落ちると無事では済まないとか、世の中には人を殺せる虫がいることを知ったとか、そういう話?」
「どうだろ。そういうこともあるのかもしれない。でもちょっと違う。君は思ったことない? 今、ここで死んじゃえば、ううん」
 死んじゃえば、とかじゃない。たとえば。
「たとえば、電車のホームとかでここで踏み出せば明日のつらいことがなくなるんだとか、眠る直前に明日目が覚めなければいいのにってお祈りしたとか、そんな小さい感じのこと」
 本当にそうする勇気もないのに、頭の片隅で考えてしまうような、そんなこと。そうなればきっと楽なんだろうな、って思ってしまうこと。言葉にしたら、きっとお説教しか飛んで来ないような、そんな願望。
「あるよ。というか、挙げだしたらキリがないほど思っている」
「そう、なの?」
「うん。けれど理由は君よりよほどくだらない」
 あっさりした声で意外な答えが返ってきたのでびっくりした。とても、温度のない声だった。
「なんだろう。上手く言語化しようとすると難しい。……自分がちっぽけに見えるから、かな」
「なに、それ?」
「自分が出来ることの小ささに時々絶望する。世界で泣いている人は五萬といるのに、一人の人間が出来ることはそう多くない。いや、それとも今の自分の安寧を手放せないだけか。今持っている全財産を手放せば、砂漠に何本の木が植えられるか、それとも何人分のワクチンが手に入るのか。出来もしないことを益体もなく考えて、我欲の強さに絶望する。その繰り返し」
 考えたこともなかった。自分のことに精一杯で、そんな絶望なんて、里菜は知らなかった。
「僕だって無性に考えるときがあるというだけで、元から理想的な世界平和が実現するなんて思っていない。でも、そんなとき妙に絶望する。自分は何も救えない、所詮は人間の容をした残骸なんだ、って無駄に自覚する」
「っ! アンタは!」
「?」
 息が苦しくなってつい大声が出た。ウィークリーマンションの壁なんて薄い。それが少しだけ気になったけれど、口から零れた声は止まらなかった。
「アンタは、違うでしょ」
「何が?」
「確かに、アンタはわけわかんないヤツだけど、でも、アンタのおかげで私はご飯もベッドも譲ってもらえて、嫌なこともしなくて済んで……。今日あった、い、いいこともたぶん、アンタのおかげで。私、久しぶりに明日が来てもいいかなって思った」
 自分でも何を言っているか、よくわからない。結構、支離滅裂だと思う。でも、そんな物言いをする彼のことが、無性に寂しかった。
「だから、ちょっとだけ私、アンタに救われたのかなって。アンタは、何も救えないなんてことは、その、ないと思う」
 元々、大きめの少年の両目が驚いたように開かれた。きょとんとした顔は、ちゃんと子供っぽく見えるから不思議な気分になった。
 それ以上、何を言えばいいのかわからなくなって俯いた。変なことを言ってしまっただろうか。でも本当のことだ。
 テーブルの向こうでふっ、と笑うような気配があった。
「ありがとう」
 いつもより殊更、柔らかい声で少年はそう言った。ありがとうなんて、本当は里菜が言うべきことなのだ。ちっぽけなプライドが邪魔をして、言えなかっただけで。自分は他人の手を借りなくても生きていけるって突っ張っていたかっただけで。
「あまり自信はなかったんだけど」
 ぷつり、とテレビの音が消える。少年の声がよく聞こえる。
「本当に君が困ったときは、全霊をかけて助けたいと思った」
 何を言っているかはよくわからなかった。顔を上げられない里菜は、それでもそれが嘘じゃないと感じた。だから、一度だけ頷いた。信じたんじゃない。信じてみるだけだって、自分でもよくわからない言い訳をして。



 ――あれ。
 いつのまに、眠っていたんだろう。頭がぼんやりしている。ノートと辞書の上に腕を置いて眠っていた。
 ベッドに運ばれてはいないから、眠ってしまってからまだそんなには経っていないだろうと思う。
 身じろぎする寸前に、気がついた。左腕が宙に浮いている。いや、誰かに左手を取られている。
 ――ひだり、て……?
 このウィークリーマンションに里菜以外の人間はひとりだけだ。違和感を感じて顔を伏せたまま、そっと自分の左側を覗き見る。
 少年が、とても神妙な横顔で里菜の左手を取っていた。ひどく表情が歪んでいた。初めて見る、嫌悪の表情。そんな顔もできたんだ、とぼんやり思っているときらりと光るものが目に映った。
 鋏。はさみ?
「――っ! やめてっ!!」
 悲鳴を上げて里菜は起き上がった。上体を起こすと同時に少年から距離を取る。左手は案外するりと外れたが、お尻で後退っただけだから大した間は開いていない。それでも手足をばたつかせて、背中が家具にぶつかるまで遠ざかる。
 少年は眉を顰めて、今にも舌打ちしそうな顔で、しくじったという感情を隠そうともしない。
「何を、しようとしたの」
「……」
「答えてよ、ねぇ!?」
「……」
 少年は何も言わない。悔しそうな、でもどこか哀しそうな顔で沈黙するだけだ。
 言い訳は、なかった。
 里菜の見たものが間違いでないとしたら、今、この少年は、鋏で。
「なんで、アンタが視えるの?」
「……」
「なんで、アンタが触れるの?」
 ――これは、私の運命の糸のはずなのに!!
 鋏で、小指の糸を、切ろうとしていた。
「なんで、切ろうとするの!?」
 里菜には縋るものがない。明日の希望になるものがない。でも、やっと、ようやく明日を楽しみにしていいと思えた。希望の糸だった。誰の著作だったか、地獄に落ちた囚人に垂らされた蜘蛛の糸みたいな。
 なのに、何故、そんなことを、里菜の希望を断つようなことをするのだ。
 ――なんで、なんで。なんで、なんでなんでなんで!?
「ウソ、よね……。たまたま、気がついて、何だろうって、邪魔じゃないかって思って、切ろうとした、だけ、よね?」
 少年を信じたかった。信じていたかった。
 だが、無情にも少年は首を振る。
「君に嘘は吐きたくない。その糸のことを、僕は知っている。たぶん、君よりも」
 その声には、温度も、抑揚も、慈悲もなかった。忘れていた涙が零れそうになって、強く目を瞬く。
 視界の隅がまたきらりと光って、テーブルの上に投げ出されたお守りに気がついた。先生からもらった、おまじないを託した、あの。
「――っ!」
 少年の手が届く寸前で、お守りは掴むことができた。左手にお守りを握り、その上に右手を重ねて、守るように抱き締める。
「っひきょうもの!!」
 何が卑怯なのかもよくわからない状態で、そう叫んでいた。震える足を叱咤して立ち上がると、転がるように廊下を駆けた。
「里菜ちゃんっ!!」
 背後で名前を叫ぶ少年の声がした。名前。教えたことはなかったと思う。何故。もう何もわからない。自分の靴に半分だけ足を突っ込んで走り出した。
 帰る場所なんて、あの、怖いアパートひとつしかないのに。


 頭の中がごちゃごちゃしている。混乱したまま、何度も人にぶつかった。謝る余裕もなく走った。あそこではないどこかへ、還りたかった。
 人気がない路地まで走って、電柱に手をついて息を整える。肩が何度も上下した。吐く息が短い。苦しい。
 淡い街灯に照らされたアスファルトに、ぽた、ぽた、とシミが広がる。涙か汗かもう自分でもわからない。
 悲しかった。つらかった。苦しかった。痛かった。居たかった。
 ――信じてみようって、思ったのに。
 そう勝手に思ったのは、自分だ。自分がそう思っただけだ。あの子は、自分を裏切らないんじゃないかって、そう勝手に信じてしまっただけだ。人は簡単に人を裏切るって、あんなに解っていたじゃないか。
 お守りを握りしめて、今度はのろのろと歩く。つま先が向くのは、自分に与えられたアパート。鍵。置いてきてしまったけど、大家さんがいるから、なんでもない。もうあの居心地のいい場所には帰れない。
 ぽた、ぽた、と勝手に頬を水が滑り落ちていく。心臓が潰れそうに痛い。全力疾走なんてしたからなのか、今さらただの少年に裏切られて心が痛いのか、わからない。わからないまま、気絶してしまいたい。
 薄暗い夜道に里菜の足音だけが響く。路地を挟めば、眩い光がまだ夜を照らしているのに、里菜には絶対にスポットは当たらない。汚くて、醜い、こんな街で、こんな街なのに、たった独りだ。
 アパートが近づく。濁った感情の波を殺しながら、大家さんに合い鍵を借りて、何があってもとりあえずは寝て、明日、あの少年のところに荷物を取りに行って。事務的なことだけを考える。それだけを考えていたかった。
 なのに。
「――っ!」
 アパートの前に、古い裸電球の街灯がある。もう少し温かくなると、虫が集まってくる。その下に縮こまる影があった。
「ひっ……」
 なんで、気がついてしまったんだろう。
 なんで、こんなタイミングなんだろう。
 そろりと人影が面を上げて、街灯がゆるりとフードの下の顔を晒す。
「あ、あ、ああ……っ!」
「あ……」
 向こうが里菜に気がついたのと、里菜が向こうに気がついたのと、ほぼ同時だった。
 吐き気と悪寒が、全身を駆け巡ってぶわりと汗が噴き出した。
 ――やだ、やだ、やだやだやだやだっ!!
 がくがくと膝が笑いだす。ダメ。やだ。逃げろ。逃げろ。走れなくなる前に、逃げろ。前は逃げられなかったから。自分を守れるものは自分だけだと、知らなかったから。
「お、おい、あの……」
「嫌ァっ!!」
 喉が枯れるほど大きく叫んで、足が動くうちに駆けだ出した。どこに行けばいいのかわからない。わからなくてもいい。どこだっていい。居場所なんて、最初からどこにもなかった。
 がくがくした足でどこまで走れるかわからなかった。どれくらいの距離を走れたのかわからない。
 ちゃんと走れたのかもしれないし、全然走れなくて微妙な距離しか開いていないかもしれない。それでもいい。距離を。距離を取らなければ。
 ――もう、怖いのは、嫌だっ!!
 もう、足の力が、ない。
 転びそうになった。足に力が入らなくて、指先は震えていたから、顔から転ぶんだろうなと、どこか冷静な場所で思っていた。
「危ない!」
「!」
 里菜の身体がぶつかったのは固いアスファルトではなかった。
「大丈夫ですか? 相原さん」
「せん、せい……?」
 あたたかい何かに手を取られた。顔を上げた。薄暗い街灯に照らされていたのは、優しく微笑む、眼鏡をかけた、大好きな、先生だった。



 泡の音が里菜を包んでいる。アイボリーの色。ふわふわした椅子。同じ色の毛布。先生の匂い。
 それしかない。それだけの閉じた世界。閉じた診察室。それだけが、里菜を守ってくれている。結局、水槽の中のエビの名前も、水草の名前も、わからなかったなとぼんやり思う。
 里菜を守ってくれる、唯一の場所で、自分を抱き締めていた。震えが止まらなかった。かちかちと歯の根が噛み合わない。電話をしている先生の声が、遠く聞こえた。
 声が、途切れる。
「相原さん、大丈夫ですか?」
 先生が柔らかい声をかけてくれる。いつものように里菜の肩に手を置こうとして、その手を止める。
「スドウケイタは捕まりました。今は警察がきちんと確保してくれているそうです。もう大丈夫ですよ。相原さん」
「……」
「何故、言ってくれなかったんです?」
「……」
「……私は、そんなに信用に足らない医者でしたか」
「ちがうっ!」
 声を張り上げた。違う。そうじゃない。
「ちがいます! 先生は、先生は何も悪くない! 私が、私が話す勇気がなかったから……!」
 この診察室だけが、里菜に優しかった。優しい時間をくれた。大切な時間だった。ずっと縋っていたかった。その優しい時間を、永遠だと勘違いしていたかった。そんな優しい時間に、汚くて、醜くて、嫌なものを混ぜたくなかった。
 それはただの里菜の我儘だ。そんなこと、とっくの昔に知っていた。
「またストーカーに遭ってるなんて、先生に知られたくなくて……! だって、先生と話してる間は、そんなこと考えなくて良かったから……! だから……!」
「相原さん」
「言ったら、現実だって認めなきゃいけないみたいで、それが嫌で、だから私が悪くて」
「相原さん!」
 いつになく強い語気に肩が大きく震える。ぴん、と緊張が走った。硬直して俯いた里菜に、先生は詰めていたいた息を吐く。
「……私が触れても、大丈夫ですか?」
 俯いて自分を抱き締めたまま、里菜は本当に小さく頷いた。そっと背中に触れた手が、やっぱり優しくてあたたかい。清潔な石鹸の匂い。
「私は、知りたかったです」
「……ごめんなさい」
「あなたの危険になり得るものなら、なんでも。知りたかったんですよ」
 ぽろりと、簡単に涙が零れた。恐る恐る、先生の白衣の裾を掴んだ。
 ――私は、ずっと、わたしは。
「私、ずっと綺麗でいたかったんです。見せかけだって分かってたけど。綺麗な自分に、なりたかったんです」
 見た目だけじゃない。身体も、心も。誰かを信じていられるような、誰かを好きでいても胸を張っていられるような。本当は。そうなれない自分が、一番、嫌いだった。
「……ええ」
「すきなひとのために、ちゃんとなりたくて、でも、できなくて。私、馬鹿だからどうしていいかも、わからなくて」
「ええ」
「でも、でも」
 先生の手が、あたたかかったから。先生の言葉が、優しかったから。
「先生、私は、綺麗になれますか……?」
 そんなことを、言ってしまったんだ。
「ええ、もちろん」
 耳元で、先生の声が響く。また泣き出しそうになって、涙を溜めたまま俯いて。

 ばちっ。

「――っ!!」
 何か焦げた匂いがして、里菜の意識は水底に落ちていった。

 力の抜けた人形のように崩れ落ちる身体を眼鏡の医師は掬い上げた。右手に忍ばせたスタンガンがぴりりと音を残す。
「もちろん、綺麗になれますよ。きっと、世界中の誰よりも、ね」
 少女の頬を撫で、その左手に握られた糸を絡め取って。彼はゆっくりと口角を上げた。



 予感というものは嫌なものほど当たってしまうと大江は知っていた。
 雨が来ると思ったら、雨は降ってしまうのだ。
 小雨の中を飛び出した大江は、ゴアテックスのフードを被りつつ水たまりの中を走っていた。車かタクシーかあるだろうと後で思った。本当に急がねばと思ったとき、人は効率というものを忘れる。
 だが、辿り着いた先でそれが正解だったと知った。
 駅から走り抜けた花屋のある公園近く。コートも羽織らず、傘もささずの少年がタクシーを捕まえたそのときに行き会ったのは、大江の強運か、日頃の行いか。
「少年!」
 たった今、タクシーの後部座席に潜ろうとしていた少年は顔を上げた。大江の姿を認識し、少なからず驚いたようだった。
 息を切らして駆け寄った大江に、少年は不機嫌を隠さずに舌打ちをした。
 眉間に皺が寄っている。嫌悪感と焦燥感がむき出しで、とてもらしくない表情だった。いつもゆるゆるとした空気を漂わせていた少年が、ぴりぴりとした緊張感を生み出している。
 大江の勘は、やはり外れない。
「何故ここに。いえ、問答している間が惜しい。ご用件なら後程」
 大江を振り切ってタクシーに乗ろうとする少年の腕を掴んだ。
「さっき、うちのライターが倒れた。件の霊感がありすぎるヤツだ」
「……」
 少年ははっとして大江の顔を見る。歯痒そうに小さく唇を噛んだ。
「今のところ命に別状はない。医者の診断は貧血だそうだ。だが、臓器機能の低下具合がおかしい」
「では病院に戻ってください。巻き込んだ身で言える立場ではないですが、ここから先は洒落になりません。何があっても僕は責任を取り切れません」
「舐めるな少年。お前さんに取ってもらう責任なんぞどこにもない。俺がお前さん一人に任せておけないんだ」
 少年が唇と引き結んだ。逡巡は一瞬、何も言わずにおろおろしている運転手の方を見る。その沈黙を肯定と受け取って隣に滑り込んだ。
「遊馬(アスマ)総合病院まで、特急でお願いします」


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